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「ごめん、用事があって」
「……場所、知ってたんだね」
目を逸らして、白い息を吐きながら呟く。本当は覚えてくれたこと、来てくれたこと、凄く嬉しいのに。
「まあ、思い出の場所だし」
「── !」
「それに……」
顔を戻したら、目が合った。
「『待ってる』って」
「……覚えてたんだ」
てっきり忘れてしまったとばかり思い込んでいた。
「じゃあ」
コートのポケットに入っていた古い写真を取り出して、あなたの前に出した。
「この写真、知ってる?」
「……」
あなたは写真を見て、何も発しなかった。その顔から、知っている事は十分理解出来た。
やっぱり。
「これ見たら、いてもたってもいられなくて、声掛けたの」
視界がぼやけ始める。泣いちゃダメだ。震える声をなんとか堪えて出す。
「この写真の通りであるなら……
──私達は兄弟なの」
写真には、2、3歳位の幼い私に肩を回して、中央で微笑む女性とその隣に座る男性の姿があった。 場所は此処の公園。
それで私は知ってしまった。全て、思い出した。この男女二人の顔には見覚えがあった。
この写真の女性は、私の今の母親で、隣の男性はあなたの父親。
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