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目を皿のようにして、写真雑誌の紙面をくまなく見ていく。
でも、どこにも私の名前はなかった。
「あーっ! あたし、名前載ってました! 期待賞ですって」
後輩の声が聞こえて、私は肩を震わせた。
「ほんとー? 初投稿だったよね。すごいじゃん!」
喜ぶ後輩を部長が褒めていた。
聞いていられなくなって、私はこっそりと鞄を持って立ち上がり、部室から出ようと戸に近づく。
「あ、私……用事があるんで。お先に失礼します」
部員たちに声をかけると、「お疲れー」と挨拶が返ってきた。
部室を出てホッとしたのも束の間、私はさっきまで読んでいた雑誌を机に置きっぱなしにしていたことに、思い至った。
取りに帰ろうと、くるりと方向転換。戸を開こうと手を伸ばした時、部室の中から声が聞こえてきた。
「澪先輩、感じ悪いですよねー。おめでとうぐらい言ってくれてもいいのに」
「まあまあ。あの子も悔しいんでしょ。高校になってから、賞取れてないんじゃ……」
後輩と部長の会話に、思わず私は聞き耳を立てた。
「でも澪先輩って、中学の時は有名だったんでしょ?」
「そうよ。昔はすごかったんだけどね――」
「なんか、悪いことした感じですね。あたしが何気なく撮った写真が、先輩のに勝っちゃったってことですし」
後輩の声に優越感が滲んでいることを感じて、唇を噛みしめる。
それ以上聞いていられなくなって、私は戸から離れて、走り出した。
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