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「で、兄貴。いつから天文に興味持つようになったんだ?」
「別にそうじゃねえよ。今日さあ、うちのクラスで獅子座流星群について騒いでるの聞いてさあ」
「獅子座流星群? 天文部もないようなうちの学校で、なんでそんな高尚な話題で盛り上がるんだよ」
「別に流星群は高尚な話題じゃないぞ。もっと俗な目的だよ」
「……?」
勝久の眉間がコイル巻きになった。困ったり、呆れたりするときのこいつの癖だ。
「流れ星に願い事すれば叶うっての、聞かね?」
「流れ星に……?」
「ほら、流れ星なんて、偶然に頼らないと見られないけど、さすがに流星群が降る夜だったら、星も流れまくるから、願い事も叶い放題じゃないかーって」
「…………」
「で、うちのクラスの奴らが練習してたんだ。いかに金金金って早く言えるかってさ」
「そういうことか」
勝久の目が呆れを通り越して、くだらない、に変化した。
「けどさ、兄貴。それってどうなの?」
「どうってなにが?」
「前から思ってたんだけどさ。金金金じゃ、金をどうしたいのかわかんないんじゃないの?」
「ああ……そういえば」
「金が欲しいんだったら、金欲しいって言わなきゃだし、それだって宝くじ当選するとか、道で大金が入ったカバンを拾いたいとか、徳川の埋蔵金を探したいとか。手段もわかんないし」
こういうところ、弟は現実的なのか空想家なのか兄である俺にもよくわからない。
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