天狗は亀に乗って

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どうしてちびの天狗に身の上話をする気になったのか、自分でも分からない。 戸惑いながらも、俺はオハナとの関係を話した。 中学、高校と同じ学校に通っていたこと。 高校の卒業前に思いきって告白したこと。 ここ二か月ほどは毎週のようにデートしていること。 彼女の口から天狗の話など聞いたこともないこと。 思いつくことを片っ端から喋り、「どうだ」と、俺は胸を張った。 「十四歳といえば中二の頃だろ。あいつは不思議少女じゃなかったぞ」 天狗は「はあ」と息をつき、天を仰いだ。 「会わないでいたのは、ほんの束の間だと思っていたが……時の経つのは早いものだな。イッセイ、おぬしを男と見込んで頼みがある。その娘をここへ呼び出してはくれまいか。最後にどうしても、ひと目オハナを見たいのだ」 天狗は、「たのむ、たのむ」と、頭の上で拝むように手を合わせた。 どうして頼みごとを聞く気になったのか、自分でも分からない。 俺はアームバンドから携帯電話を取り出して、メッセージを打つ。 「天狗がオハナに会いたがっている」 事実だけを告げた。 妖怪の口にした「約束」など、信じてはいない。 ただ、一心にこちらを拝む姿は、胸に迫った。 人間なら百歳を超えているんじゃないかという年寄りが、十八歳の俺に頭を下げている。 それだけ必死なんだ。 そう理解した。 俺自身は、たとえ騙されたとしても構わないんだ。 オハナに心当たりがなければ、既読無視するだろう。 朝っぱらから下らないジョークだと、笑いとばすかもしれない。 でも、それで済む話だ。
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