天狗は亀に乗って

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朝のこの時間、まだ寝ているかなと思ったが、すぐに返信があった。 「急いで行くから、ボートハウスの前で待ってて」 天狗を見たことよりも、彼女の返事に驚いた。 「オハナの家はすぐ近くだから、十分か十五分ほどだろう」 俺がそう伝えると、天狗は「よっこらしょ」と甲羅の上に立ち上がった。 「おぬしはやはり、よい男だ。……イッセイ、すまぬ。どうか許してくれ」 なんのことだ、と尋ねる間もない。 のぞき込む俺の顔に向けて、天狗が広げた手のひらを突き出す。 めまいが襲ってきた。 目の前の光景がぐるぐると回り始める。 立っていられなくなった。 世界が暗闇に覆われる。 意識が遠くなっていった。
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