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むかしばなし
目が覚めると、俺は両手を広げた姿勢でうつ伏せになっていた。
ジョギング中にめまいを起こして倒れたらしい。
そのせいで変な夢を見たのだろう。
身体の下は土ではなく、ごつごつとした岩だった。
表面には凹凸があるものの、磨かれたように滑らかで、つややかな黒色をしている。
黒曜岩だろうか。
規則性のある亀裂の部分には苔がびっしりと茂っていて、ほのかに草のにおいがする。
子供のころ、公園に置かれたコンクリート製の動物の上で腹ばいになった、そんな感覚が蘇った。
上体を起こして周囲を見回す。
俺の乗った岩は人の背丈ほどもある草むらの中を、ゆっくりと移動していた。
「この岩、動いているのか」
意識がはっきりしてくるにつれ、徐々に答えが分かってきた。
なぜ動くのか。
俺が横たわっているのが乗用車くらい大きな、亀の甲羅だったからだ。
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