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始章 邂逅――。
少女は孤独を潜めてお菓子を作った。足許を見れば必ず貼りついている影のように、それは幼い頃より付き纏った。
「お姉様、どうかされましたか」
「お姉ちゃん、なんか考え事でもしてるの」
少女は呼ばれて微笑んだ。
「新しいお菓子のレシピを考えていたのです。今度試作致しますね」
手にした実感のない姉という立場を、家族という温かい場所を、失わぬためには孤独を秘するほかなかった。
自分はどこの誰で、どこへ行けばよいのか。誰と繋がり、何を道標に歩めばよいのか。誰に愛され、どんな「未来」をうむのか。
――君は、ぼく達の本当の子じゃないんだ。本当の親は――。
自分という存在が始まった場所・時間はどこにある。じつの両親と思っていたひとと血の繋がりがないと判った瞬間から、少女は考え始めていた。
――答は出ず、不安定な足は未来を思い描くための一歩を踏み出すこともなかった。
雨が降りては草木が芽吹き、花が咲いては実が溢れ、大地に根差しては雨露を吸い、草木が息吹く――。
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