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俺は自らを会社員だと偽り、あいつを金で買っていた。高校生のあいつは1ヶ月に3万も渡せば俺の言うことを聞き、俺に恋をしているような顔を平気で作り上げた。女は男を欺く生き物だ。しかしまた、男も女を欺くことに長けている。狐と狸の化かし合いは、永久に続くのだろう。
酒と煙草、女。好きなものに囲まれて緩やかな自殺のような日々を過ごすのは、悪くなかった。本当は仕事もせず遊び歩いている俺を、あいつは神のように崇めてくれた。
それが終わった日のことを、俺は鮮明に覚えている。七月三日。暑さが本格的になり、俺たちは多少の苛立ちを感じていたのだろう。明るいところの似合わない俺たちには、日の長い夏は苦しいものだった。
「スズキさん、働いてないの?」
絶望的なその大きな瞳は、ありのままの俺を映したのだろう。些細なことで嘘がばれた。俺は言い訳を重ね、ヘラヘラと笑って見せたが、あいつは違った。
「だめだよ、男の人は働かないと。わたしもしばらく会いに来ないから、仕事を見つけなよ」
どうしてそんなことを言うんだよ。俺は結局、金づるか?
仕事をしていなくてもお前に金は渡しているだろう?
それで、いいじゃないか。
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