烏滸がましい。

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「俺のこと、今はどう思ってるんだ」 「それはどういう意味ですか」 「どうって、そのままの意味」 ネクタイを緩める姿が、昔の記憶と重なる。何度も見た姿。見慣れた姿のはずなのに。 「昔と変わらない。わたしだけ、時間が止まっています」 嘘はつけない。彼の恐怖から未だに抜け出せないわたしは、自ら彼の中へ沈もうとしている。ああ、目頭が熱くなる。こんなことで泣くような女ではなかったのに、彼から離れてわたしはくだらない女に成り下がった。彼の嫌いな、くだらない女に。 「そう言ってくれると、嬉しい」 子供のような笑顔を向けられると、わたしは底なし沼に沈んでいくような感覚になる。底がないならば、もがくよりも沈んでいく方が楽だろう。そして永遠に沈んでいけばいい。 「部屋、入ってもいいか」 わたしは頷き、降りたエレベーターに引き返す。エレベーターの中は狭く、嗅ぎなれた彼の香水の匂いがあっという間に充満した。二年前から同じ香水を使っているのか、はたまたわざわざ今日のために同じものを纏ってきたのか。狡猾な彼のことだ、後者だろう。
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