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「先生は何で怒らないの」
「怒ってほしいのか」
「そんなことはないけど」
「教育っていうのは無理矢理にでもやらせなきゃいけない場面もあるけど、見守ってやるのが仕事のときもあるのだよ」
大人は訳のわからない台詞で、わたしたち子供を煙に巻く。いつまでも子供でいられないわたしたちは、それらを飲み込んでようやく大人になり、大人になってから言葉の意味に気付かされるのだろう。それではもう、遅いというのに。
先生と手を繋いで公園を歩きたい。そんな子供じみた願望が、今のわたしの一縷の望みだ。あり得ない情景を脳内で描いては、上手にそれを消しながら生きている。
「ずっと子供のままではいられないのかな」
「それは無理だね。時が来たら大人にならざるを得ない。身体ばかりが成長して、心が子供のままの大人もたくさんいるけれど、君はそんなふうになったらダメだよ」
「今の、すごく先生っぽい」
「先生ですから」
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