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強欲だななんて、そんな薄情な言葉は出なかった。いつだって俺とは違う考えを持つ冬樹は、こんなにも憎たらしくて愛おしい。そう思えるのはきっと、腐れ縁以上の何かがあるからだろう。
だから俺は、少しだけそんな冬樹を鼻で笑っては錆びた自転車にまたがった。動かしてやらないと、隣にある冬樹の自転車が出せない。
「わかったよ、そのわたあめの正体ってやつに付き合ってやる。さっさと行くぞ」
「和人はお母さんみたいだ」
「……行くのやめるぞ」
「嘘だって、待って」
俺を追うように自転車に飛び乗る冬樹を見れば、俺は助走をつけてペダルを踏み込んだ。最初は重いだけのそいつも、踏めば踏むほど軽くなっていき俺はなんだか楽しくなる。
「どこまで行くんだ」
「とりあえず海!」
なんとも安置だなと思った。雲といえば海ってか、きっと俺もその発想だけどさ。
「けど海って、十駅分はあるぞ」
「だから抜け出してきたんだ、こうやって道がすいてる時にしか行けないからな」
確かに、今日の道はなんだかすいている。これが平日の特権と言ったところだろう。なんだか、ワクワクする。
「あちぃ」
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