どんな時も、世界は美しい。

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どんな時も、世界は美しい。

「雲ってさ、わたあめみたいだよな」 「……は?」  目の前で紡がれた言葉は酷く平坦で、その癖何を言いたいのか汲み取れないくらい馬鹿げた内容だった。付き合いが長い俺でも、これには思わず顔をしかめる。 「いい精神科なら紹介してやるぞ」 「なんでそうなるかな」  そんな間違った答えでも返しただろうか。当然な事を言った俺は、少し不機嫌な親友の冬樹を見て思わず首をかしげた。 「例え話、ってあるだろ。和人は相変わらず頭が固いよな」 「お前の頭は軟体生物だな」  こんなやり取りもいつも通りであり、けれども同時に名残惜しさを感じる。  高校三年生とは色々とナイーブなもので。小学生から腐れ縁のようにここまで一緒だった冬樹とも、卒業したら違う進路を行く事が決まっている。  俺は進学。冬樹は、就職。  どこにとかはまだ決まっていないが、それでも冬樹と違う進路を歩むと考えるのはまだしっくり来ない。だってこいつと俺は、ずっと同じ進路だとばかり思っていたのだから。ずっと笑って、ずっと馬鹿やって―― 「なぁ和人、ちょっと抜け出さないか?」 「……お前、補習中に何言ってんの」
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