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嘆息して卑下するヤスの母親。
「自分の子供にそんなことを言ってはいけないよ」
フジエばあちゃんは末娘をそうたしなめましたが明子は何やら狼狽して居間の方へ行ってしまいました。
一方ヤスの父親は息子を自分自身が果たせなかった薩摩隼人一の剣道家にすることが彼の夢でしたが、それが自分の軟弱な息子には無理だとわかるとそれ以後息子には無関心になりました。ヤスの家庭はまあそういう境遇だったのです。
小学校でのヤスへの同級生達の扱いも良いものではありませんでした。
体調がすぐれず体育の授業を見学した時、心無いクラスメートから「このサボリ魔ァヤッセンボー」と罵られました。「ヤッセンボ」というのは薩摩言葉で意気地無しという意味を表し薩摩隼人を卑下する最低の侮蔑言葉でした。
ヤスは悔しくてもこの病弱な体では刃向うことも出来ません。涙を必死に堪えて帰宅してフジエばあちゃんの膝元に抱き着いて号泣しました。
「薩摩ん男は親がけ死んでん涙を見すんな」(薩摩の男はたとえ親が死んだ時でも人に涙を見せてはならない)
これは武を第一とする薩摩隼人族の厳しい掟でありました。
それでもフジエばあちゃんは泣き出してやまないヤスをやさし
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