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第一話 ユトリロの呪い
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「あの人なに、まるで悪魔か……死に神じゃない」
ぼくの少し後ろから坂をのぼっていた光源寺(こうげんじ)菫(すみれ)が囁く。
「そんな怖い人じゃないって。見かけはまあ、確かにそのとおりかもしれないけど」
午前中で試験から解放され、ぼくも菫も、いつもより軽い鞄を肩からぶら下げている。
もっとも軽いのは鞄だけで、試験の結果を思うと気持ちは重くなるのだけれど。
国道からはいった細い坂道をだらだらと登った先に、その店はある。
オーナーがどこかで拾ってきたらしき流木に、白いペンキの文字で、《ギャラリー蜂の巣》。
さほど商売気があるとも思えない、いたずらに書き殴ったような文字が踊っている。
店頭に置いてある木のベンチの前で、今しがた菫が「悪魔か死に神」と称した店長の雨宮(あめのみや)龍之介(たつのすけ)が、腰を折って作業をしている。
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