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10月21日
雲一つない真っ青な空を見上げながら私は歩いていた。
風が心地よく髪を揺らし、頬をかすめていく。
私は両手で蓋の空いた、大きな白い段ボールを抱えていた。
その中には眠る白黒模様の猫ちゃん。あっくん。
( 外だよ。今日はいい天気だね。 )
心の中であっくんにそう呟いた。
あっくんもこの風を感じているだろうか・・・
お坊さんの後ろを母と二人ついていく。
自動扉が開き、職員の人が礼をして私たちを迎える。
冷たい台の上に白い段ボールの棺を乗せた。
最後のお別れだ。
棺の中で白いお布団に包まれたカラダ。
お花と鰹節とお気に入りのキャットフード。
それと、私たちからのメッセージカード。
最後にふわふわの毛を撫でながら、カピカピになった耳に「ありがとう」と囁き、
お別れのキスをした。
「それでは失礼します。」
職員の人も手を合わせ、そして棺が閉じられ、ガムテープが張られた。
とても丁寧に優しく扱われながら。
そして、銀色の重厚な扉が開けられた。
この冷たい台ごとその中に入っていく。
ああ、とうとう本当にお別れだ・・・・
どこからか機械の音声が聞こえた。
電源が入り、着火され、炎が上がる音が聞こえた。
重低音のノイズが響く。
あっくんの焼却がはじまったのだ。
お経がはじまり、目を閉じて手を合わせた。
あっ君との思い出が次々に頭の中を巡っていく。
( 今まで、本当にありがとう。楽しかったよ。一緒に過ごせて幸せだったよ。あっくんはどうだったかな?天国に行ったら、また元気に走りまわれるからね。皆と仲良くするんだよ。 )
私は涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだった。
必死で漏れそうな声を押さえた。
( またね・・・ )
お経が終わり、私はぐしゃぐしゃの顔のままお辞儀を交わした。
収骨までは1時間ほど。
控室に案内しながら、お坊さんが言った。
「にゃんこの寿命は平均14歳なんですよ?この子はすごいですね。21歳。人間の歳でいうと疾うに100歳を超えている。きっと、愛情をたっぷり受けて幸せに暮らしたんでしょうね。」
私は振り返り、そして再び空を見上げた。
真っ青な空に白い煙が真っすぐ昇っていた。
天国まで続いているかのように、どこまでも。どこまでも・・・。
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