手のひらを太陽に

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 さっちゃんの思い出にサーの思い出が隣り合わせになって増えていく。これから足湯とさっちゃんを思い出す時には、サーの事も一緒に思い出すだろう。  十五個目の湯泉に足をひたしながら、サーに話しかけた。  「私さあ、さっちゃんが……、死んじゃうこと、多分、分かってたのに……。なんで……」  「さっちゃんも、亡くなるその時まで、元気になるって思っていたかったのであろう。もし会っていれば、お前の顔に絶望を見てとったはずだ。  それにな、楽しかった日を、笑った顔を、覚えていて欲しかったのだ。だから弱った体を見ないように、運命がお前を遠ざけたのだ」  「そうかな……」  「空を見上げてみろ。何が見える?」  「空……」  「そうだ。空とお前だけ。他の誰もいない。だからな、さっちゃんと二人になれるだろ。いつか笑った顔を見せてやればいいサー。今は涙がこぼれても、楽しい思い出を楽しく思い出せるようになったら」  サー、いいこと言うときでもオヤジギャグ言うんだね。照れ屋のさっちゃんを想いだした。     「その時まで、一緒にいてくれる?」  空から湯に目を戻すと、サーはもういなかった。だからまた空を見上げた。  さっちゃんとサーと私。三人きりになりたくて。            
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