手のひらを太陽に

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手のひらを太陽に

 手のひらを太陽にすかしてみた。保育園の前を通りかかったら、有名なあの歌が聞こえてきたから、思わずやってしまったのだ。  「まーっかに流れる僕の血潮……」  可愛らしい歌声に合わせて口ずさむ。指のすき間から太陽の光がチラチラ洩れる。  「あっ……」  目がかゆくなって手の甲でゴシゴシこする。太陽の光が目に入ったせいだろう。  こすって涙がにじんだ目をそっと開ける。  「あのー、誰ですか?」  と聞いてみた。この場合、冷静にたずねている場合じゃないのは分かってる。でも騒いだって周囲には誰もいない。  「待ちたまえ」  私は太陽に手をかざした時から立ち止まっていた。でも待ちたまえ、と言われると待たない方がいい気がしてきた。  ソロソロと足を横にずらし「それ」を避けて通ろうとした。  「待てと言っているのに」  サササッと道をふさがれる。さっき太陽の光が目に入ったから、目の錯覚がおきているんだ。だって、十センチ位のおじさんが通せんぼしていたら、誰でもそう思う。  「怖がるでない」  怖がってはいません。ハワイのカメハメハ大王みたいな格好をした十センチのおじさんは、恐さとは対極にいる存在ですから。  「誰ですか?」     
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