[1] クラシックのCD

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「勝手に人の心を読まないでほしいな」 私は彼女へ歩み寄る。 「いつまで食べるつもりかい」 「……眠くなるまで」 「CDを食べたら眠くなるの?」 「クラシックって、聞いてたら眠くなるもの」 「だったら『聞き』なよ」 私はCDコンポを彼女に差し出す。 彼女は少しだけ身を引く。 「耳からじゃダメなの。不安なの。口を通して、喉を介して、胃におさめないと……」 いやいやと子供のように首を振って。 「栄養にして、からだの一部になって、それでようやく安心できるの」 彼女は思いがけない力で私からコンポを奪い取ると、 ガジリと音を立てて噛みついた。 8代目のコンポが逝った瞬間だった。 そろそろCDという媒体にこだわるのも卒業した方がいいかもしれない。 私はわかりやすくため息をついた。
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