0人が本棚に入れています
本棚に追加
上目遣いで、こちらの様子を見ながら、口元はもぐもぐと。
床に投げ出されたゆるやかな長い髪に私はそっと触れた。
……キューティクルが痛んでいる。
不眠症の影響だろうと、ため息をついた。
私のため息をどう捉えたのか。
彼女は追いすがるように私の手をにぎった。
「大丈夫だよ」
彼女を安心させるための声は、酒焼けでハスキーになっている。
「このていどじゃあ、嫌いにはならないよ」
はっきりと言葉に変えなくては、彼女には伝わらない。
なかなか洒落た言い回しができないなと、自分を情けなく思う。
最初のコメントを投稿しよう!