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「帯雲はねぇ、『帯雲虫(おびぐもむし)』が脱皮した皮なんだよ」 「うんうん。それで?」  ダソルはユンの空想が好きだった。 「帯雲が……あ! 違う。『帯雲虫(おびぐもむし)』の皮がだんだん千切れて細かくなっていくでしょう?それが雲に混ざって雨と一緒に地面に落ちてくるんだ。皮には栄養がたっぷり入っているから、作物が良く実るんだよ」 「なるほど」 「でもね。人が近づいてしまうとダメなんだ。あいつは人のことなんて見えてないから何も悪さをしてこない。だけど、人が空に行けるようになったら気付かれてしまうんだよ。大事にしてる玉に小さい虫が付いてるってね。嵐や洪水を起こして洗い流そうとするんだ。だから、近くで見てみたいけど人は空を飛ばない方がいいんだ」 「そうか。じゃ、この話を知ってるか? 大河は『帯雲虫(おびぐもむし)』が落ちた跡なんだ。深い溝ができてそこに水が溜まったんだ。『帯雲虫(おびぐもむし)』は落ちる直前に幼虫を産むんだ。筋雲、見たことあるだろう? 空に残れるのは一匹だけ。ほかは消えて雲になる。残った奴はだんだん大きくなって『帯雲虫(おびぐもむし)』に育つんだ」 「わあ! 僕、やっぱり近くで見てみたい!」 「うん。沢山勉強をおやり。そして学者になって人が空に行ける道具を、お前が作るんだ」  ユンはダソルを見上げた。大きな目でまっすぐにダソルの目をみると、少し悲しげに微笑んだ。 「……ダソル。春になったら町へ行くんでしょ?」 「……ああ。ユン、知っていたのか」
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