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ユンとの想い出は尽きない。あれからずいぶん大きくなったな。と、ダソルはしみじみとした。
そうだ。ユンのいう通り、 いよいよここを出る時がきた。
ダソルは夕日に照らされた少し悲しげなユンの笑顔を見つめ返す。少し悲しげではあるが、ユンは笑顔を見せてくれた。
もう、ユンも幼子ではない。ダソルが居なくとも、一人でやっていかなければならないこともある。
精いっぱい作ったユンの切ない笑顔には、そんな決意が見える。
ダソルも踏ん切りをつける時だ。そんなユンの決意を大切にしなければならない。笑顔を返し、もう一度、ユンの頭を優しく撫でた。
「……さあ、もう入ろう。暗くなってきた」
「うん。夜ご飯は何かなぁ。お腹すいたね」
「ああ。沢山食べろよ」
「お前はチビだからな」と、ダソルはユンの頭に手を置く。ユンは無邪気にぴょんぴょん跳ね、「チビじゃないよ! ほら」と、おどけて見せた。
「襟元がはだけてるぞ」
「だって、羊が帯をかじるんだもの」
「ほら、襟を合わせろ。旦那さんに叱られるぞ」
着崩れた着物を整えてやると、ユンは「はーい!」と満足そうな笑顔だ。見つめ返すダソルの笑顔は切なさが滲んでいた。
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