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伊根屋は俺を、まるで猫を抱くように優しく抱える。
そして鼻歌を歌いながら歩を進める。
『おおまきばのみどり』、と歌っていると推測できるが
メロディがなんだか惜しい感じである。
「それにここは牧場じゃない……」
選曲に文句をつけずにいられない。
「だったら今度、一緒に行こう」
強制的に外出の約束をとりつけられる。
「僕の田舎は広大な牧場があってね、でも動物は全然居ないんだ」
少しだけ、伊根屋が遠くを見るような目になった。
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