02:山の中にて

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伊根屋は俺を、まるで猫を抱くように優しく抱える。 そして鼻歌を歌いながら歩を進める。 『おおまきばのみどり』、と歌っていると推測できるが メロディがなんだか惜しい感じである。 「それにここは牧場じゃない……」 選曲に文句をつけずにいられない。 「だったら今度、一緒に行こう」 強制的に外出の約束をとりつけられる。 「僕の田舎は広大な牧場があってね、でも動物は全然居ないんだ」 少しだけ、伊根屋が遠くを見るような目になった。
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