Ⅰ 三日月の夜に

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私が住み込みで働く事になったこのお店ーーー リストランテ【moonlight】は、三人のイケメン兄弟で切り盛りするらしく、 物腰柔らかで誰が見ても王子な聖優月(ひじりゆづき)さんは三兄弟の長男。 お店のオーナー兼経理だとか諸々を担当するらしい。口調も丁寧で優しいけれどどうも目が笑ってないのが気になるけれど。 大人の落ち着き感たっぷりの32歳。 そして、何かと上から発言な俺様、聖観月(ひじりみづき)さんは三兄弟の次男。 何と、シェフだと言うから驚いた。 あんなにも口は悪いし荒っぽい性格なのに、実に繊細なお料理を作るんだよって優月(ユヅキ)さんが教えてくれた。 ふうん…ちょっと興味あるよね。 歳は私と同じ25歳だった。 そして、ホール担当アイドル的な存在、三兄弟の末っ子、聖睦月(ひじりむつき)くん。 三人の中では一番、害はなさそうな気がするんだけど。 今のところはだけどね。 高校生くらいかなと思いきや、なんと現役大学生、私より3つ下の22歳だった。 どうして、この三人でこのお店を今、始めるのか詳しくはまだ聞かされてないけれど驚いたのがつい最近まで、優月さんも観月さんも普通に会社勤めをしていたらしい。 しかも、優月さんに関しては大手の商社に勤めていたらしく、今回もお店の資金は優月さんが全て用意したらしい。 「あかりちゃん、これで、最後だよね?」 「あっ、はい、優月(ゆづき)さん、すいません。結局、引っ越し手伝っていただいて…。」 「気にすることないよ。うちの大切な従業員になるんだから当然だよ。取り敢えず、開店までまだ日にちあるし、ゆっくり部屋を片付ければいいよ。そうだ、後であかりちゃんの歓迎会するから落ち着いたら下に降りて来て。」 「あっ、はい!ありがとうございます。」 私がそう言うと、にっこりと笑って優月さんは階下に降りていった。 面接の時は何とも言えない威圧感に戸惑ったけど、優月さんて、なんだかんだ言ってやっぱりお兄ちゃんと言うか頼りがいあるんだよね。 さてと、ちゃちゃっと片付けて早く行こう。 歓迎会だなんて…嬉しいな。 と、完全に浮かれていた私はその歓迎会にて飛んでもない事実を知ることになるんだけど。
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