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塀のてっぺんから、マルクがこちらへ向かってロープを垂らす。それを使って俺はすばやく塀を登った。
塀の上に立って見下ろすと。
はるかな眼下に海が見えた。夕闇は急速に濃くなり始めていたが、それでも岩に当たって砕ける波の白さがはっきり見て取れた。
海面までの距離の遠さに、俺は一瞬ひるんだ。
「大丈夫だ、ヴァレンチン」
マルクの大きな手が、俺の手を握った。
「行くぞ。手を離すなよ」
背後から響く激しい銃声。足元で弾ける弾丸に追いたてられるようにして、俺たちは固く手を握り合い、海へ向かって身を躍らせた。
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