いつものところで

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駅からほど近いにも関わらず、ファーストフード店はすんなりと果歩たち3人を受け入れてくれた。 平日の昼間だからだろうか、それともここが都心のビジネス街ではないからだろうか。客の姿はそう多くはなかった。 3月末日。自宅から歩いてきた間は風もあったためまだ寒々しいと思っていたものの、ここは温かい。 窓から入ってくる日差しは紛れもなく春のそれだ。もう冬ではない。ぐずぐずと思い悩んでいる間にも時間は流れて次の季節が来ているのだと、果歩は改めて思い知らされた心地がした。 「あぁ、もう今日でモラトリアムも卒業かぁ」 向かい側に座る律が言った。その台詞を追い掛けるようにして、コーラを飲み干す音が響き渡る。がらがらと氷が寂しげに揺らされた。 どこか落ち着きのない仕草だと、果歩は気が付いた。 普段からガサツな部類ではあるものの、わざわざ氷を揺すってまでドリンクをひたすら飲みたがるようなところは、見たことがない。 何せ、幼稚園に入園する前から知っている間柄だ。 律のことなら前髪を1ミリ切っただけ、ぐらいのちょっとした違いにだって即座に気付く自信がある。
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