<第9章> 思えば思わるる

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 最寄駅に早足で歩きながら、姫松に電話をかけた。今日のデートに行けなくなったと言うと、姫松はたいそう怒り出した。当たり前だ。 「なぜ?」  語気荒く、詰めるように姫松が言った。 「ホントにごめん。駅伝の応援に、京都まで行くことになった。ウチの高校が出るんだ」  せめて嘘はつかずに、誠意を持って謝ろうと考えた。 「駅伝?それがそんなに大事なの?」 「そうなんだ」 「私よりも?」  その言葉は、心が痛む。 「うん。ごめん。謝って許されることではないとわかってる」 「本当にそうだわ。デートをキャンセルされるなんて、こんな恥ずかしいことは今までなかった」  え?恥ずかしい?そっちなのか?翔は良心の呵責が少し和らいだ気がした。 「この埋め合わせは必ずする。どうしたらいい?」  しばらく黙って考える姫松。 「じゃあ、二つお願いしていい?」  ふ、二つ?こちらが悪いんだから、まあ仕方がない。 「いいよ、何?」 「一つは誕生日プレゼント。また来週に買ってくれる?」  なるほど、だから誕生日の今日にデートしようと言ったのか。 「今度はアクセサリーを買ってもらうわ」 「ああ、わかった」  またもギターが遠のいた。 「もう一つは、私の家庭事情は死ぬまで誰にも言わないって、もう一度誓って欲しい」 「それは大丈夫だ。こんなことが無くても、秘密は守る」     
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