<第9章> 思えば思わるる

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9-5 ◇◆◇  家の最寄り駅から電車に乗り、市内最大のターミナル駅まで行く。そこで京都方面のJRに乗り換える。  この乗り換えは巨大な地下街を通るのだが、普段使い慣れない駅で、迷ってしまった。最短で五分で乗り換えられるのに、十五分くらいかかった。  綾香のスタート時間に間に合うかどうか微妙になってきた。もうミスはできない。  電車に乗ってしまえば、目的駅に着くまで焦っても仕方がない。三十分くらいJR線に乗っている間、スマホで京都駅の駅案内図を見つけ出して、地下鉄への乗り換えの予習をした。  無事に乗り換えた地下鉄で目的の鞍馬口駅に着いたが、電車の扉が開くのももどかしかった。扉が少し開いたところを体を斜めにして、車外に飛び出る。  ホームの階段を駆け上がり、自動改札を抜けて走り続けた。更に地上への階段を二段飛ばしで駆け上がると、ようやく表に出た。  辺りを見回すと、駅伝コースである片側二車線の車道を歩道から眺める大勢の人が、まるで垣根のように並んでいた。人垣の後ろ側を、翔は第三区のスタート地点に向かって走りだした。 (間に合うだろうか。こんなことなら我孫子に電話かアドレスを聞いておけばよかった)     
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