<第9章> 思えば思わるる

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「早く言え!」  後ろから沙知が、背中を突く。 「わかったから、待てよ」  荒れた息を落ち着かせないと。 「間に合わなくなるよ!」  沙知が急かした。綾香は半身になって、後方を見ている。  翔は大きく息を吸い込んだ。両手を口の横に当てて叫ぶ。 「神ノ木!」  綾香は声に気づいてこちらを振り返ると、目を大きく見開いて驚いた。 「姫松さんとのデートは?」 「キャンセルした」 「なんで?」  綾香は目を白黒させている。 「それは…」  言いよどむ翔の背中を手のひらでバンバン叩きながら、沙知は耳元で囁く。 「早よ、言わんかい!」  焦らせるなよ。  翔はもう一度息を大きく吸い込んだ。 「それは、神ノ木が好きだからだ!」  綾香が目を丸くして、ぽかんと口を開けている。そしてすぐに、満面の笑みをを浮かべた。  口元が「ありがとう」と言ってるように見える。周りの見物人も、何人かが翔の言葉に気づいてこちらを振り返る。 「神ノ木にがんばって欲しいから、応援に来た!」  その言葉を聞いて、綾香は急に表情が引き締まった。両手で頬をはたき、勝負師のような顔つきになる。 「綾香、来たよ!」     
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