<第2章> 玉磨かざれば光なし

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「≪仲良く≫とか≪綺麗≫というのは曖昧すぎて、目標として達成できたかどうかもわかりにくいし、これからどういう行動を取ったらいいのか計画も立てにくいわけ。だから例えば綺麗な景色を見たいって場合、どこの景色を見たいかまで、具体的に落とし込んでみるんだよ。君はどこの景色を見たい?」 「いや、別に俺は綺麗な景色を見たいなんて思ってないし……」 何を言ってるんだこいつは。 「そう言わないで、思考のトレーニングだと思って考えてよ」  綾香は楽しそうに笑っている。  なんなんだよ一体。姫松と仲良くなることと、綺麗な景色が何の関係があるんだ。そう思いながらも、考えてみた。 「えっと……あ、そうだ。日本アルプスの山並みかな。確か北アルプスだったと思うけど、中学の修学旅行で行って、どこまでも続く壮大な山々と雲のコントラストが素晴らしかった。また見てみたいと思う」 「じゃあどうしたら、日本アルプスの山並みを見れる?」 「修学旅行は新幹線で名古屋まで行って、観光バスに乗った気がする。今行くなら、どうやって行ったらいいんだろう?」 「そんなのはスマホで調べたら?」 「あっそうか」  翔はそんなことも気付かない気恥ずかしさで、綾香の顔を見ずにスマホを操作した。 「へ~わざわざ新幹線に乗らなくても、大阪からも東京からも直行バスが出てるんだ。これで日本アルプスに行ける」 「ほらね。≪綺麗な景色を見たい≫だと次の行動が起こしにくいけど、≪北アルプスの山並みを見たい≫だと、簡単に行動が思いつくでしょ」     
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