<第2章> 玉磨かざれば光なし

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「学校の試験じゃないから、正解かどうかなんてわからないよ。結果として正解だったかどうかは、やってみないとわからない。正解になるかどうかは、君次第ってとこかな」 「そんな無責任な」 「でも、悪くないと思うよ。今まで挨拶をしたこともないってことは、そもそも姫松さんは、君の存在に気付いてないかもしれないでしょ。挨拶をすることで、存在を意識してもらうことができるよね」 「いやいや、いくらなんでも同じクラスで毎日顔を合わせているんだから、存在くらい気付いているだろ」  綾香は人差し指を立て、ちっちっちと舌打ちしながら左右に揺らす。 「じゃあ君は、毎日通学路で目にする、道端の草の存在に気付いているの?」 「ちょい待て!俺は雑草と同じなのか?」  こりゃまた酷いことを言う女だ。翔はむかついた。 「冗談だって!」 「は?」 「あっはっは!冗談に決まってるじゃないか、加賀谷君。それに気付かないなんて、君らしくもない!」  また出たよ、怪人二十面相。こいつの笑いのセンスがよくわからない。優れた冗談というのは、人を傷つけるようなことは言ってはいけない。 「酷い冗談はもうやめてくれ。『挨拶をするってのが悪くない』というのは、冗談じゃないよな?」 「あ、それは冗談じゃないよ」  綾香は素に戻った。 「朝や帰りの挨拶をしようよ。できるだけ自然にね!」 「あ、ああ。それなら簡単だな」     
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