<第2章> 玉磨かざれば光なし

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 そう言いながらも、翔はそれすらも簡単じゃないと思った。綾香はそんな翔の気持ちを見抜いているかのように言った。 「好きな人に自然に挨拶するのは、言うほど簡単じゃないかもね。でも同じクラスなんだから、失敗しても何度もチャンスはあるよ。まずは気軽にチャレンジしてみよう」  綾香はノートの《ステップ1》の下の行に、 《コミュニケーションを取る》と書き、 その下の行には《挨拶する》と書き加えた。 そして更に行を変え、 ・できるだけ自然に ・気軽に何度もチャレンジする と箇条書きにする。 「何日かこれをやってみて、その結果を見てから、次の《ステップ2》の打ち合わせをしようよ。いいかな?」 「え?あ、ああ」 「じゃあこれで、第一歩の計画作成は完了!」 ◇◆◇  満面の笑顔で、諸手を挙げる綾香。どうやら本日の綾香の講義はこれで終了のようだ。 まだ昼過ぎだというのに、とても長い一日を過ごしたような気がした。目の前には、冷めかけたピラフとハンバーグランチ。 「おい神ノ木。飯食おうぜ」 「あ、ホントだね。ついつい夢中になって、忘れてたよ」  翔のピラフよりも量が多いランチセットを、ばくばくと食べる綾香。小柄なのに、スポーツをしているからだろうか。エネルギッシュな綾香の元気の源であるような気もした。 「明日からが楽しみだねー」     
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