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座敷牢にいること
夫婦になって三月が経った。
権定が閨で可愛の膝枕でうとうとしていると下男が申し訳無さそうな顔でやってきて言った。
「大旦那様と大奥様がお呼びです」
「ん」
「あのう。若奥様もご一緒に」
「……よい。可愛はここから出ない」
さっさと一人で出て格子を閉めると権定は両親の座敷へ向かった。
顔を出すと父母は顔を見合わせ、「やはり」とでも言いたげに権定を座らせた。
「いつまで可愛をあそこにいれておくつもりだ」
「いつまでとは」
「妻を外に出さないことを、周囲はなんと噂しておるか知っているか。お前がまた殺してしまったのではと言っているのだぞ」
「なにを馬鹿なことを」
「屋敷から出さないのではなく、お前の閨の座敷牢から外に出していないのだと周囲に漏れでもしたら」
「漏らしそうな者を始末したらいかがですか」
「恐ろしいことを言うでない!」
顔をひきつらせた母に叫ばれ、権定は鬱陶しいとばかりに顔を反らした。
自分でもこんなことずっとは続けられないことはわかっていたのだ。
可愛は文句一つ言いやしないが、ただ不思議そうにしているのだ。
「可愛を思うなら外へ」
「外へ出して、また間男でも作らせろと?」
「お、お前まさか本気でそんなことを」
「本気ですとも。いや、本気なわけないでしょう。可愛は男女が同じ布団で眠りさえすればややこができると本気で信じるような女ですよ。わたしは腰巻きの裾だってめくりやしないのに」
母はおいおいと泣いたし、父は真っ赤だった顔を今度は真っ青にして唇を震わせ始めた。
「権定、お前。一体何がしたいのだ」
「父上。わたしはもうしたいことをしております」
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