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とはいえ父母を悲しませることはよくなかったと権定も反省した。だから次の日は休みだったので可愛を外に出してやろうと思っていたのだ。
仕事帰りにいつもなら素通りする菓子屋に立ち寄ったのだって、可愛が喜びそうな落雁でもと思ってのことだったのに、自宅につくと憔悴しきった顔の母が飛び出してきて権定にすがりついて泣いた。
「どうしたのです」
「可愛が、可愛が連れ戻されました」
「なんだと!」
慌てて閨に入ると、可愛はおらず騒ぎで倒れたのか衣紋掛けが格子にひっかかっている。
「どこに!いや、だれに!」
「可愛の父です。このような恐ろしいところへは置いておけぬと大声で怒鳴り散らしておりました」
「すぐ可愛の実家へ参ります」
父がやってくると手に持っていた扇子で権定の左頬を殴った。殴られるとは思わず、しかし激高は収まってうなだれる。
「誠心誠意謝罪からだ。お前がしでかしたことを、お前が償え」
「償うとは」
「自分で考えろ」
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