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「それではずっとおばあさまのお宅に」
「はい。世話をしたりされたりで仲良くしていたのですが、昨日葬式を出したばかりです」
「そうですか。それは寂しいことでしょう」
「ええ。今日権定さまとお会いしたことを祖母にも聞かせたかった」
「あなたは優しい人のようだ」
にこにことそういうなり、可愛の手をひょいと取って握った。するとあとは二人でと付添で来ていた可愛の母や本家の男にいって手をひき庭に降りていく。
手を借りて草履を足にひっかけ顔をあげると、すぐそばに権定の顔があった。目をまんまるにして可愛の所作をじろじろと見て、そしてたぶん彼の中で合格したのだろう「うん」と頷いた。
「僕の家にきてください」
そこではいと応えてしまい、そしてそのまま連れてこられてこの座敷牢にいる。祝言の日は出してもらえたし、特段不便なことはないのだが、しかしここは寒かった。
寝所と呼ばれるこの座敷牢で、可愛は権定の妻ではなく肉布団扱いされているのだとわかるのは、下女らが話している声が聞こえてきたつい昨日のこと。祝言をあげてから十日が過ぎたころだった。
こういう状態なので家のことをすることはできない。なにせこの家に入ってからそのまま寝所と呼ばれる座敷牢に閉じ込められているのだから。
初夜の翌朝、寝所を出ていく権定について出ようとしたら押し戻されてわけがわからないうちに錠前をかけられてそのままだ。
座敷牢の中には便所もあるし、板戸をしめれば見えないので気にはならないが日中をぼんやり過ごすのは気持ちが落ち着かないし、ただ寂しかった。お武家の奥様といえばある程度時間にもお金にも余裕があって憧れるものだが、こういう形態もあるのかと知りがっくりしていた。
(旦那様が毎晩帰ってきてくれるからこそ、ここにいられるようなものだし)
ふと思う。権定は前妻とどんな生活をしていたのだろう。
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