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祝言は滞りなく行われ、実家は驚きつつも厄介払いが済んでホッとしている様子であった。姉は妹の夫となる権定の顔をみて顔を赤くしていたし、それは母もだったので可愛は恥ずかしく思った。
「母と姉がご無礼を」
「いや。慣れている」
そういうものかと思いながら最後の客を見送った。
「父上、母上。我々はこれで下がらせていただきます」
「ああ。権定、本当にあの中で暮らすのか」
「はい」
「しかし、なあ」
「可愛を守るためです」
淡々とそういいきり、可愛の手を掴むとすたすたと離れへと入っていった。
離れの寝所に拵えた座敷牢の中には布団が敷かれ、行灯には火も入っている。
「自分でも、よく堪えたと思う」
連れてきたその日のうちに抱こうと思ったのだが、祝言の支度に手間取り寝所に戻りすぐ寝てしまったのだ。
「お疲れ様でした」
可愛には権定が言ったことの意味は伝わらなかったらしい。
「ああ。可愛」
座った彼女の膝に頭を載せて寝転ぶと、柔らかい手が額に載った。
(やはり心地良い手だ)
今日祝言をあげるためにいろいろと無茶もやったが、今度こそちゃんとした妻を娶るという権定の思いは強く父母も駆け回っていた。
(この手を選び正解だった)
これからは毎晩こうして撫でてもらおう。そうだそれがいい。うっとりと目を閉じるとまたすぐに眠くなってしまう。しかしこれからまだやらなければならないことがあるのだ。
「可愛。もう」
「おやすみください。初夜だからといって気を使っていただかなくても」
本当にそう思っているようで、可愛は自分より大きい権定を簡単に布団にいれてしまった。
「お前もここに」
「でも」
「いいから」
「旦那様に一つ、黙っていたことがあって」
「黙っていたこと?」
「私、その寝相が」
「そんなこと気にしないさ。さあ。来なさい」
腕枕してやると、彼女の緊張した体がくっついてきた。手のように柔らかい体やその香りを楽しんでいると、疲れていたらしい可愛がストンと眠りに落ちていった。
眠る妻にいやらしいことをしても面白くないと自分も寝ようとすると夢乃の手がふわりと権定の腕に触れた。まるで温もりでも求めるように触れると、安心したのか動かなくなった。
(可愛も私を求めていたのか)
そう思うと嬉しくなり、権定も目を閉じ眠った。
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