月は泣き、星は添う

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「また今年も、このめでたい日がやって来た。君たち一人一人は、一つ学年が上がり、何よりも全員無事に此処に戻ってきた。よかった。本当に良かった。そして先程、新しい一年生たちがこのグラン魔法学園にやって来た。今、『水晶の間』で寮分けの儀式を行っている。君たちが入学して来た時にやったのと同じ儀式だな。それが終われば、彼らも此処にやって来る。太陽、海、大地、星……それぞれの寮は、今日からまた新しい家族を迎えることになる。彼らが、新しい風を連れて来てくれることだろう。諸君らが、この一年でまた大きく成長することを、心から祈っておるぞ。お、一年生が来たようだな」  真っ直ぐに入口のドアを見て彼が言った一言に、私は頬が引き攣るのを感じた。  パチン、と一つ、大きく手を鳴らす音。  同時に、ギギギ、と重い音を立てて、深い茶の、木でできた扉が開く。  向こう側に見える、沢山の小さな頭。  ザワザワという、声の雨。  「さぁ、一年生の皆さんは、私について来てください」という、凛とした声が聞こえる。  小さな彼らは、きょろりきょろりとその大きな目を、目一杯に動かして周囲を観察しながら、この大広間に足を踏み入れた。  私の座る、海の寮の長机と、隣の大地の寮の長机の間を、彼らはきゃあきゃあ言いながら歩いて来る。  段々と彼らが近付いて来るのを感じながら、私は俯いて黒いローブを握り締めた。  本当は、ローブに付いているフードを被ってしまいたかった。それを被って、俯いて。誰にも私の姿が見えないようにしてしまいたかった。  しかし正式な式典である入学式の場で、フードを被ることは禁止されている。だから私は、せめてこちらを向く好奇の視線から逃れようと、ただただ俯いて目を強く瞑った。 「ねぇ、あれ……」 「え、何で『月の人』が……」     
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