月は泣き、星は添う

3/18
前へ
/18ページ
次へ
「白い人は魔法が使えない、ってパパとママが言ってたけど、何で此処にいるんだろう……」  声の雨の間から、細かい氷の礫が降りて来る。  それは大広間中を照らす柔らかい蝋燭の明かりを受けて、キラキラと透明に、冷たく光りながら、容赦なく私に打ち付ける。そして柔らかい部分にぶつかっては、そこを少しずつ傷つけていった。  毎年のことだ。このような言葉を隠れて投げられるのは。  彼らも、見飽きればやがて何も言わなくなる。  わかっている。  わかっているけれど、この全身を突き刺す好奇の視線と、投げられる無意識の礫が、痛い。どうしようもなく痛い。  脚が、手が、背中が、震える。  だから、入学式は嫌いなのだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加