月は泣き、星は添う

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 『月の人』というのは、魔法族の中に時々生まれる、魔法を使うことができない人々のことだ。  白銀の髪に、紅玉の目を持つのが特徴で、魔法族の血を引いているにも関わらず、魔法族が潜在的に持つ魔力を持たない。故に、魔法を使うことができないのだ。  魔法族の者たちは昔から、魔法を使うことができない『普通の人間』を自分たちよりも劣った存在と考え、忌み嫌ってきた。彼らは、『普通の人間』は過去に大罪を犯し、それ故に魔力を奪われた、『咎の人』である、という認識を持っている。  当然、そのような魔法族の中にあって魔法を使うことができない『月の人』たちは、他の者たちから忌み嫌われ、差別、迫害を受けた。  『月の人』という名は、それはそれは美しく、気高いもののように聞こえる。  だがその真実は、『月に魔力を奪われた、哀れな人々』『月の呪いを受けた者』という意味の、蔑称だ。  私は、その『月の人』の外見を持って生まれた。  魔法族の中でも古く、力を持つ家系である雲居の家。  そこに生まれた、穢れた存在。呪われた子ども。それが私だった。  父も母も、兄たちも。使用人でさえも、必要以上に私に近寄ろうとはしなかった。     
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