月は泣き、星は添う

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 大広間で今年の寮監に各寮のブローチを渡す儀式が終わった後は、各々寮に戻っての歓迎会だ。  ソワソワと忙しなく頭を動かす一年生を、寮監となった長身で眼鏡の先輩が、苦労しながら誘導している。いつもは鋭く、知的な印象を与えている顔が、焦りに歪んで今日は幼く見えた。  パタパタという幼い足音と、カツリカツリという上級生たちの靴音が、混ざっては話し声を彩りながら、石造りの廊下に柔らかく響く。  楽しそうに話しながら、あるいはふざけ合いながら歩く黒いローブの後ろ姿を眺めながら、私は一人ゆるゆると寮に向かった。  途中の窓から見える月は、冷たく、美しく、こちらを見下ろしていた。
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