月は泣き、星は添う

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 十学年分の生徒が入る寮の広間は、建物の最上階に位置している。  ドーム型の天井は相も変わらず人工の星空で、星が強く、弱く、瞬いている。  時折、思い出したように星が流れて消えて行く。  天井を見上げていた一年生が、それを見てきゃあきゃあと声を上げた。  あの星が落ちる前に願い事を三回言うと、その願いが成就するらしい。  それを聞いた他の一年生たちも、皿に取った料理を食べながら、偽物の流れ星を探し始めた。  私は皿に、魔法で作られた味気ない料理を何種類か取り、なるべく目立たないように部屋の隅の大きな柱の陰に座った。小さくなりながら、フォークで皿の中の料理を追う。  辛くもなく、甘くもない。感覚に対する働きかけがほとんどないそれは、優しい味ではあるものの、表面だけだ。誰かが手で作る料理とは、何がとははっきり言えないが、明らかに違う。とても、寂しい味だった。  何の感慨も沸かない食事である程度腹を満たして、再びホールに戻る。  刺さる視線を避けるようにしながら、皿をテーブルに置き、ティーバックの紅茶を煎れる。     
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