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――――宇宙の海から地球の海へ―――――
2000年以上も昔のある出来事。
ちょうど四国の南の端、ほんのり温かい、熱帯の香りのする、黒潮のあたる真っただ中の、荒磯ひしめく太平洋。
断崖絶壁を越え、うっそうと茂る常緑広葉樹の木々の隙間から聞こえる潮騒が、いつもと変わらない、悠久の時の流れを感じさせる、ある晴れた日の夕暮れ時。
物凄い勢いで、宇宙の彼方から迫ってくる隕石、それは、迷いのかけらすらなく、ただただ一直線に、まるで、強い意思で誰かに導かれるようにやってきました。
自分が舞い降りる、次なる地にあるものすべてを拒むかの如く、一掃するよう荒々しく、ただその場所、それだけが自分のよりどころな如く。
海水面を蒸気とともに突き破り、後から360度、追いかけるように広がる衝撃波。
辺りの海と言わず山と言わず見渡す限りのもの全てに衝撃をあたえて。
「まあまあ、相変わらず騒がしいこと、ちょっと乱暴しすぎるのは、いつになってもいやなものね」
「せめて、「今から落ちますよ」って、前もって連絡ぐらいしてくれればと、いつも思うんだけど、まあ、これだけは、そうはいかないみたいね」
「それにしても、あれだけ騒がしく派手に落下してきたのに、今度のは、またまたずいぶん可愛らしいのがやって来たこと」
「でも、これじゃ、ちょっとばかり、景気がよくないわね」
「このところ、続けて、あんまり大きなやつが落ちて来てないみたいだけど。あっち(宇宙)のほうも、あまり景気が良くないのかしら」
「で、この隕石、ふ~ん、またこれはこれは、変なのがくっついてきちゃってるみたいね」
いつまでも続く終わりのない時間の中で、限りなく広いこの宇宙にあって、たまたまの巡り会わせで、この地球に落っこちてくる隕石。
だけど今度、落っこちた、この隕石さん、いつものやつとはちょっと、違ってるみたいです。
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