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――――月日が流れ、また何年か経った、波も穏やかなある日のことです。
海面から波に揺られてゆったりと差し込める、柔らかな朝の日差しを浴びて、色づくものも何も無かった、とってもさびしそうな隕石さんのてっぺん付近に、お花の髪飾りがくっついていました。
それは、ほんのり淡い桜色に色づいた、枝づく枝もほとんど無い、ちっこい、ちっちゃな、モモイロサンゴの赤ちゃんでした。
誰にも気づかれずに、ひっそりと生えて、小さいながら生き生きと輝いています。
いつから生えたのか誰も気が付きませんでしたが、今すぐってわけでもなさそうです。
でも、きっと隕石さんは気がついていたんでしょうね。
それにしてもモモイロサンゴは深海サンゴ、普段はこんな浅い海に生えるなんて、ほとんど無いことなのに、とってもめずらしいことです。
これも、あの、変わった隕石さんの力でしょうか。
赤ちゃんサンゴといっても自然界の厳しい海で、たったひとりで生きているなんて大したものです。
一人ぼっちで寂しそうだった隕石さんにも、ちっちゃな友達ができました。
どちらも無口で何もしゃべったりはしないけど、なにか嬉しそうな雰囲気がつたわってきます。
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