第1章 あの頃のこと

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講義室で経済の授業を受けながら、 私の頭は経済学どころじゃなかった。 インセンティブとかオプション取引とか、 もうそれどころじゃないよ!! とグルグルしてた。 健治(けんじ)のことが好き。 それはもうずっと前から自覚していて、 でも健治は私のことどう思ってるか分からないから、私としては何も言い出せなかった。 「なに1人百面相してたのよ」 授業が終わって隣の席にいた愛佳が、 私の顔を覗き込んだ。 「あんた、全然授業集中してなかったでしょ。先生こわぁい顔して睨んでたよ。」 「うそっ」 「睨んでたというのは嘘だけど、ちょっとため息ついてた」 「あちゃー」 「まぁ、アンタは先生のお気に入りだから また会ったら謝っときな」 部活担当の先生でもあったので 「うん…そうする」と頷いた。
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