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健治との出会いは、高校の文化祭準備だった。
元々同じクラスだった私は、
須藤健治という名前は勿論知っていたけど、
彼がどういう人物なのかは正直知らなかった。
学校もよく休んでたし、来ても授業をサボってふらりと外に出かけるなんてこともあるくらい…
ようは掴めないクラスメイトだった。
でも皆んなが言うように無愛想だとか、怖いと言うイメージはなかった。
それは単に身長が高くて、目が一瞬すわってるように見えるからなんじゃないかなーと思ってた。
あの日
珍しく文化祭の準備に出てきてた彼と
クラスの催し物のお化け屋敷の準備をすることになった。
軽くポールで骨組みしたところに暗幕を張る…確かそんな役回りだったと思う。
「須藤くん、ごめんそこの暗幕取ってー」
彼の横に置いてあった暗幕を取ってもらおうとしてたけど、反応がない。
よく見たら彼は立ったまま器用に寝ていた。
え?寝てるの?
意外なその寝顔に一瞬ドキッとしたけれど、
そんな場合じゃないと短い手を精一杯伸ばして
プルプルしながら取ろうとした。
危ないっ、バランスを崩して地面に身体をぶつけそうになったその時
「たく、危ねぇなー。周りしっかり見るか俺に頼めよ」
と彼が片腕を支えて何とかこけずに済んだ。
「いや、だって須藤くん寝てたし…」
「え、マジで?やっべー」
見る見るうちに彼の顔が真っ赤になって、手で顔を抑え始めた。
「え…」
彼がそんな反応するなんて思いも寄らず戸惑っていると
「えと、俺今すげーギターにハマっててさ。ずっと弾いてんの。友達とスタジオ借りて」
と語りだした。
「けど勿論高校生が、しょっちゅうスタジオ借りれるだけの金もあるわけなくてさ、バイトしてて…
それでたまにウトウトしちゃうわけよ」
とまくし立てるように話しだした。
「けど、これせんこうにばれたらヤバイから内緒な」と話した。
「何で、私にそんな話ししてしてくれるの?」
「いや、だってお前はそう言うことは、誰にも言わさそうだから?」
それから、私と健治は何となく話すようになっていった。
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