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健治は、とにかくギターが好きだった。
ピック片手にたまに、屋上でギターを聴かせてくれた。
楽譜は読めないし、書かないと言ってたけど
その分並外れた聴覚で細かな音も聞き分けていた。
素人の私には詳しいことは分からなかったけど、ギターから流れてくるメロディは
とても生き生きしていて本当に音楽が好きなんだなということが伝わって来た。
健治は本当は高校を辞めて、バンドを組みたいと言って居たけれど
親御さんが許してくれないと言っていた。
学校を辞めてまで本当にやりたいことなのか、と聞かれて強く言えなかったと言っていた。
だから大学は絶対軽音楽部のある大学に行きたいと言っていた。
健治がなぜ私にそんなことを話してくれたのかは分からない。
ただ私は彼の無愛想な外見からは想像もつかないような繊細なメロディや、
不意に見せる照れたようなはにかんだ笑顔を見て
どうしても声をかけずにはいられないようになった。
私はどちらかというとどん臭くて、間抜けで・・・
生活委員とかやっているせいか先生に頼られることも多かったけど
そのぶん期待に沿えらえれてない自分に対して不甲斐なさみたいなものが残っていた。
健治とこっそり過ごす放課後のわずかな時間は、
そんな私でもどこかそのままでいて良いんだよって言われているような気がして
素のままの自分でいられる貴重な時間だった。
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