第1章 あの頃のこと

7/13
前へ
/67ページ
次へ
「上持先輩、おめでとうございます!憧れの商社内定もらったんですよね」 現在4回生の上持晃(うえもちあきら)先輩は 競争倍率10倍以上の大手商社の内定をもらったことで部内でも、先輩のことで話題が持ちきりだった。 二重まぶたで大きな瞳とすらっと伸びた鼻筋の甘いルックス、 そして180センチ近くある身長で 周りの女子からも憧れだった先輩は、なぜか私のことを気にかけてくれて話しかけてくれるのだった。 そのことについては私なりに色々考えて見たけれど やっぱりどじで間抜けだからかなぁなんて思ったりしていた。 「いや、そんな大したことはないよ。でも飯橋に言われるとまんざらでもないかな」  先輩がにこやかに微笑む。 きっとこういう笑顔に女子はやられて、キャーッと声をあげられるかもしれないなと思った。 でも私はやっぱり健治の笑顔がいいと思ってしまう辺り、 かなり重症だということがわかった。 「・・ところでさ、飯橋(いいはし)は次の日曜とか空いてる?」 「え、空いてますけど どうされたんですか?」 「いやこないだ、確か原稿の読み方わからない部分があるって言ってたでしょ?  就活も終わったから、日曜だったらゆっくり見れるかな・・と思って」 「あ、ありがとうございます!でも先輩卒論も忙しいんでしょ?だったら無理しなくて大丈夫ですよ?」 先輩と私の身長差で自然と先輩の顔を見上げる形となってしまう。 「いや、大丈夫だよ。ある程度卒論も目処が立ってるから。じゃあ予定ないなら日曜日の10時に放送室で大丈夫かな?」と言われ 「わかりました」と答えた。 先輩って、後輩に優しいんだな その時は私はそのくらいにしか先輩のことを考えていなかった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加