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「落ち着けるわけないでしょ!
前から晃の気持ちが傾いてるのは、わかってたけど分かってるの?あの子は他に好きな子が居るのよ?!」
大きな声で喋っているせいか、紗英先輩の声ははっきりと扉越しに聞こえる。
何かまずそうだな、出直してこようか…
そう思いその場を立ち去ろうとしたその時、
「もういいっ!!勝手にしたら!!」と
扉を開けてよりによって紗英先輩が出てきた。
あ…
言葉を発するより先に涙目になっている紗英先輩と目が合ってしまった。
紗英先輩は気まずそうに顔を隠しパタパタと去ってしまった。
「飯橋聞いてたのか…」
「ごめんなさいっ、聴くつもりはなかったんですが
たまたま早めに着いてしまって…
私出直してきます」
気まずくて帰ろうとしたら、
「いいよ、大丈夫だから。」
先輩が側に駆け寄ってきて、私の片手を掴んだ。
いつも健治が腕を掴む時は、
掴まれた瞬間ドキドキしてしまうのに…
やっぱりこんなに違うんだな
どこかで冷静に分析してしまう自分がいる。
先輩は
「ごめん」とその手を離すと
「みっともないとこ見られちゃったな。
……俺、紗英と長く付き合ってたんだけどさ…」
「え…そうなんですか!?…知らなかった…」
「だろうな。飯橋は気づいてないだろうなぁ…と思ってたよ」
先輩は可笑しそうにはにかんで、笑った。
「俺ら、別れたんだよ」
「え…なんで?!」
ビックリしていると、
「飯橋を好きになっちゃったから」
と言われてしまった。
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