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これが現実
薬品の匂いが満ちる病室を、紅く染まった陽光が射しこんでいる。
部屋一面を赤く装飾した太陽は、役目を終えるかのように山影に隠れ、姿を眩ませた。
仄かな光は、暗い部屋を照らしている。
傍観するかのように、庭の大樹は葉を揺らし桜の花びらを撒き散らしていた。
ひとえに一流の霊媒師が見れば、すぐにわかるだろう。
周囲に取り巻く高濃度の霊力は、たった一本の大樹から放出され、半径五キロにいる生命体存在を隠している。
濃霧のよう残痕する霊気は、いまも悠々と辺りを覆い尽くしていた。
「……やっと、やっと」
大樹を眺めた少女は、拳を強く握り締めていた。まだ薄着では涼しく、冷風が肌に吹くたびに、体温が奪われていく。
薄着から除く肌白い肌は、神秘さを放っているも健康的な色合いであった。
街には電灯が灯り、徐々に活気が満ちていく。
紅(くれ)雛(ひな)琴音(ことね)は無言で、部屋の戸をノックした。
開閉とも、暖かな微風が頬をなで、琴音はゆっくりと中央のベットへ足を向けた。
無造作に置かれたコードの山は、蛇に生殖行動のように絡めあい、迷路へと誘うかのように歪であった。 琴音は歩いた。
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