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辛うじて影響を受けていない掌は、ロボットアームのように骨格が見え、力を入れただけで簡単に折れてしまいそうなぐらい弱々しい。
効果など何もない。本当の意味でのただのおまじないだ。
だけど、くだらないと言いながらも、彼はいつも真剣に聞いてくれた。
だから願うのだ、彼が安らかに死ぬ未来を。
琴音は両手で頬を叩き、赤く染まった頬でにっこりと微笑む。
殺す。
それが彼を救えるたった一つの方法で、琴音ができる最後の贖罪だ。口に出してしまえば、簡単にできてしまいそうになるが、今のままでは到底無理である。
そう。
無力な人間が黄道十二門の精霊を呼び出すように。
そして、自らの対価を払って奇跡を呼び出すように。
自身がその極地に行けるかはわからない。でも、努力し続ければ、いずれ到達できるかもしれない。
だから、待っていてください。
琴音はふぅー息を吐き、窓から照らす満月を見ていた。
空という荒野を広々と使い、月は淡い光を散らしている。
雲一つない空、美しい満月。
琴音は思い出すように、その言葉を添えた。
「また、会いに来ますね」
その景色は彼と出会った日に酷似していた。
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