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包みから取り出すと、肉汁がたっぷり染み渡ったハンバーガーが俺の鼻孔を激しく刺激し、涎を堪えながら喉を鳴らす。
新商品のビックリハンバーガーであったため、「本当に奢りですよね」という視線で七海に向けると、七海はふぅ~とご満足そうにストローを加えながら、メロンソーダを味わっていた。
いつ見ても様になっている仕草をしてくるので、異性である俺も気になるが、狙ってやっているのだろうか。
わざとなら間違いなく成功していると言えるが、無意識にやっているのなら質が悪かった。
視線に気付いた七海は、ストローから口を離し、疑うように見据える。
「何、まだ食べたいの」
「ぇあえ、全然これだけで十分です」
視線ってそんなに物欲しそうなの。ないと言い切れないので、罪悪感に呑まれるならしぶしぶ手元の物にかじりつく。
旨い。
さすが、店で高額類に入るだけあると思い、黙々と食らう。
半分くらい食べ終わった辺りで、七海がふと何かを思い出したのか、スカートのポケットを漁り、紙切れをテーブルに置く。
見るからに小切手のような紙なので、依頼の報酬分けであることを一目で理解し、一旦食事を止める。どうしょうかと悩み出す俺に、七海が大雑把な回答をしてきたので、驚愕する。
「分割でいいわ」
「ぇええと、いいんですか。半分貰って」
「別にいいわ、またこの後依頼で、それの数倍の金額稼ぐから問題ない。全額でも良いくらいよ」
「全額は遠慮しときます」
そう、と頷いた七海であるが、瞳がぎらりとぎらつき、悪知恵を思わせる腹黒い笑顔で俺に視線を向ける。
冷房の効きすぎなのか、辺りが急に冷気空間へと変わり、皮膚をビクビクと震わせる。
「不注意であれを攻撃してしまったことは謝るわ。ごめんね、輪くん。だから治療費、賠償金としてこれを貰ってくれないかしら」
「......」
「こちらとしても受け取って貰えると有り難いのだけれど」
それは小切手だった。分割にした金額と同じで、明らかに先程分割したもう片方のだと解る。
罠だなと判断できるが一切、無駄口不要という狂気が襲い、手の感覚が微かに麻痺していく。
断った場合、賠償金を受け取らせるため、問答無用で攻撃してくるだろう。
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